New York of the 1984 to 1985

日常の中にある、あたりまえの風景でも、
少しだけ角度や目線を変えて見てみると、
今まで見て感じていたものが
別のモノに見える事がある。
そんな瞬間を切り取ったものが、
自分の好きな写真だと感じる。
多分、写真だけでなく
日常の出来事や人間関係も、
様々な角度や立場から見て考える事が出来ると、
人生はもっともっと膨らみ、楽しくなるだろう。
視点を変えてみると、個として生きながらも、
他と繋がる事が出来る事にも気がつく。
それを、煩わしく感じるか喜びに感じるかは、
その人次第だと思うのだが。

1984年から1985年の
ニューヨーク、マンハッタン島。
20代に写真修行のために渡り、撮影をしていた
カラーポジとモノクロームフィルムを
デジタル保存する為、今一度見直してみた。
その頃のマンハッタンは、
危険と隣り合わせの緊張感の中で、
見る物、感じる物全てが刺激的で
荒削りながらも、自由な視点や思考を持って
撮影していた事に、改めて気づかされた。
そして、少し曖昧とも思える視点すら
妙に心地よい。
写真は、時代の記録検証という役割だけではなく、見る人によって、様々な物語を想像させる。
人生には、それぞれの物語があり、
その人達が創ってきた街そのものにも、
物語を見る事が出来る。
過去の自分が、そして型にはまらず
生きているニューヨーカー達が、
今の自分に語りかけてくる。
いつの間にか、“きちんと生きなければいけない”
という事に、とらわれすぎていないかい?
“心まで不自由になる必要は無いのさ。
日々を生きるのではなく、今日を生きなよ” と。

KENJI SATO 佐藤謙司

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